鎌田實の小さな一歩、大きな幸せ
認知症になっても、不幸でない。
65歳以上の認知症の推計数は、平成24年の時点で約462万人、予備軍は400万人(厚生労働省の資料)。37年には、予備軍を合わせると、1000万人を超えるとの説もある。
もし自分や家族が認知症になったら、と不安に思うことも多いでしょう。しかし、認知症になることを、過度に恐れる必要はありません。それを教えてくれたのは、佐藤雅彦さんです。彼は51歳の時、若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。一人暮らしで、糖尿病を患う彼は日常生活でさまざまな工夫をしています。
例えば、今日が何日かわからない、インシュリンを打ち忘れる、電車の降りる駅を忘れる・・・といったことを防ぐために、パソコンや携帯電話のスケジュール機能を活用。道に迷ったときのために、住所と「私はアルツハイマー型認知症です」と書いた紙を常に所持しています。
どれも役立つ知恵ですが僕が彼から、もっとも学んだのは、認知症であることをオープンにする大切さ。勇気のいることですが、それによって周囲からサポートが受けやすきなり、彼は自由に外出。できるようになりました。
失敗を恐れて、ひきこもってしますと、残された機能、も衰えてしまいます。しかし、認知症になっても積極的に支援を利用しながら社会に参加し、残された機能を発揮することができれば、進行を遅らせることが可能です。
認知症は早期発見により、今の生活をより長くつづけることができます。初期の症状で多い物忘れのほか、
無気力になった、同じ行動をくりかえす、なども認知のサインである場合があります。あれっ?おもうことがあれば、早めに認知症の専門医に相談してください。
「認知症になって生活が少し不便になったけれど、不幸ではありません、僕は幸せです」
診断から10年。今に元気に暮らす佐藤の言葉は、長寿時代を生きる僕たちに大きな勇気を与えてくれます。
鎌田實
「認知症とともに歩む本人の会」 ご紹介 |
川口市、蕨市、戸田市とその周辺で暮らす認知症の人が主役・主体となる
「認知症とともに歩む本人の会」がスタートしました。
「認知症とともに歩む本人の会」の“はじめの一歩”に際して
○私たちは、認知症の人どうしが集い、日々の暮らしの心配ごとや、これからの暮らしについて話しあえる、身近な機会と場をつくることが大切なことだと考えています。
○そして、私たちがこれから行っていきたいことへの手助けをしてくれる様々な立場の地元の人たちとのつながりも同じぐらい大切だと考えています。
○この会で話しあわれたこと、話しあいから生まれたことを、地域の多くの方に役立てていただけるよう、様々な立場の方々に伝えていきたいと考えています。
今後にむけて
認知症の本人が集まりやすく、話しあいやすい「会」にしていくことを大切にしていくために、また、認知症の本人、家族、手助けをする人達が、気軽に楽しい時間をともに過ごし、活動をともにするためにも、自由度の高い活動と運営を心がけていきたいと思っています。様々な立場の多くの方々に、この会の主旨、活動についてご理解いただき、今後にむけたアドバイス、ご提案をいただければ幸いです。
平成28年1月15日
「認知症とともに歩む本人の会」一同
代表挨拶 佐藤雅彦
認知症本人のみなさんへ
自分が認知症ではないかと不安を感じている人。
診断を受けてこの先どうしたらよいか光が見えない人。
不便や不自由が増えてストレスいっぱいの人。
他人の手を借りて日々を送っている人。
いま、たくさんの認知症当事者がこのとき過ごしていると思います。
1日1日、そして人生を、ともに生きていこうではありませんか。
失った機能を悩んだり、嘆いたりするのではなく、残された自分の能力を信じましょう。
認知症になっても、楽しみは張り合いのある暮らしをおくることができます。
絶望することなく、希望を持ち待ちましょう。
できなくなったことが多くなっても、自分は自分です。認知症になったからこそ、他人を気にせずに、他人と比較することなく、自分の好きなことに時間を使いましょう。一人で頑張らず、同じ病気を持ちながら暮らしている仲間とつながりましょう。
そして、勇気を持って、自分が感じていること、思っていることをまわりの人に伝えていきましょう。
当事者が発言していきことで、認知症にたいする誤解や偏見をなくし、世の中をかえることができるはずです。
認知症になっても、人生をあきらめないで。
私もあきらめません。
私と一緒に認知症になっても、充実した生活をするのは、何が大切か話し合いしませんか。
1. 目的
1)
認知症になっても、希望と尊厳を持って生活できる社会をめざします。
2)認知症の人が、自由に意見、要望が述べられる、環境を作ることをめざします。
3) 認知症の人の行動の自由を守る社会をめざします。
2. 活動内容
1)認知症の人が、差別されることなく社会の構成要員と認められるすべての活動をしま
す
2)認知症と診断された人への偏見をなくす活動をします。
3)認知症の人が希望と尊厳を持って生活するにはとうすればよいかともに考えていきます。
4)認知症の人が楽しく暮らすにはどんな手助けが必要か一緒に考えていきます。
5)認知症の人がどんな社会参加できるか、一緒に考えていきます。
3 参加する人
メンバー 認知症の人および認知症ではないかと心配している人
パートナー メンバーの理解者で、会の趣旨に賛同して、会の運営に協力する人
4 スローガン 認知症であっても、不便であるが不幸でない。
メッセージ
1.認知症になっても、できなくなることも多いが、できることもたくさんある
2.認知症への偏見は認知症当事者も信じて生きる力を奪うので、この偏見をなくしたい。
3.失った機能を数えたり、嘆いたりするのではなく、残された能力を信じて、悔いのない人生をおくってもらいたい。
4.認知症当事者を介護の対象だけの存在ではなく、私たちが形成する社会の一員とみとめて欲しい
5.自分で自分を好きになってもらいたい。
伝えたいこと 佐藤雅彦
1 認知症の診断、そしていま
私は川口市在住で現在61歳です。名城大学理工学部数学科を卒業後、教員をへてコンピューター会社に就職しました。27歳の時転職して、システムエンジニアとなりました。1999年ごろから社内会議の議事録が書けなくなり、パソコンなどの商品の型番・数量の[佐藤雅彦1] 型番を記憶できず、入力するのに時間かかるようになりました。しばらく休職した後、2002年配送係として復職しましたが、配送先の台車を忘れたり、自分の車を探すのに30分もかかることもありました。2005年、精神科を受診したところ、CTで脳に委縮がみられ、アルツハイマー型認知症の診断をうけました。51歳のときでした。会社は自ら退職することになりました。
現在私はケアハウスで一人暮らしをしています。私は荒川土手に咲くは花を見るのが好きです。美しい花たちを眺めていると、「生きている」とのを実感します。
2 私が作る私の生活
認知症に伴う日々の困りごとや不便はたくさんあいます。それをできるだけ少なくするため、私が生活の中で工夫していることがあります。
・毎朝起きると、パソコンで今日は何日で何曜日か、そして今日一日のスケジュールを確認する。
・何をしたのかを忘れてしまうため、午前と午後どう過ごしたのかをパソコンに入力する。
・人との待ち合わせ時間・場所は、なんどでも確認できるように、電話ではなくメールでやり取りをする。
・携帯電話のアラーム機能とお薬カレンダーで薬の飲み忘れを防ぐ
・買い物に出かけるときは「買い物リスト」と「買ってはいけないものリスト」を持ってゆく。
・台所で火を使用しているときは、それを忘れないように、絶対に他のことはしない。
・社会とつながりをなくさないように、日々出来事をフェイスブックで発信する。
認知症になるとできなくなることが多いものの、できることや残っている機能も。たくさんあります。そしてそれは、人によって大きく異なっています。世間では、認知症の人はパソコンなど使うことができないと思われていますが、私の場合、パソコン、Ipad,携帯電話を使いこなしながら、生活をしています。私にとっては、記憶障害を補うツールとして、それらはなくてはならないものです。
3 こんな社会であってほしい
認知症と生きていく中で、私は2つの偏見をしりました。一つは自分の中にありました。「いろいろなことができなくなってしまう。」という偏ばか見するのではないか(先入観)です。それによって「失敗ばかりするのではないか」という不安に身動きがとれなくなったじきもありました。もうひとつの偏見は社会にありました。「認知症の人は考えることができない、なのもわからない」といったものです。
この2重に偏見は、認知症とともに生きようとする認知症当事者の力を奪い、生きる希望を覆い隠すものだとおもいます。
私には、社会や地域の人たちにお願いしたいことこうあってほし思うことがあります。
・認知症の人が失敗しても、笑ったり、馬鹿にしたりしないこと。
・認知症の人を劣った価値のない存在とかんがえないでほしい。
・スーパーや駅の窓口などで認知症の人がもたもたしていても、優しく待ってくれる社会であってほしい。
・認知症の人が好きな時に自由にでかけられ、好きなことができる街にしてほしい。
・認知症の人を社会のお荷物や介護の対象と考えるのではなく、私たちが形成する社会の一員と認めてほしい。
認知症になると、確かに「不便」なことは増えますが、決して「不幸」なことではありません。500万人近くいる認知症の人たちが、これからもともと前向きに希望をもって人生を生きることができるように、みなさんと一緒に考えてほしいのです。そして一人ひとりに少しだけサポートしてほしいです。